レポート
融資と投資。創業資金をどう工面し、成長資金を調達するかは、経営者にとって最も頭の痛い問題。事業成長のなかでの融資と投資の見極め方、VCの選び方、事業の伝え方と心構えなど、4人の女性経営者が、オープンに貴重な体験とアドバイスを語りました。
実は3人の登壇者の間にも長い経営歴のなかで、出資・融資関係があることが明らかにされたところで、ファシリテーターをつとめる株式会社iSGSインベストメントワークス 取締役 代表パートナー佐藤真希子氏は、「創業資金をどのように工面し、成長資金はどのように調達したのか」、さらに「融資・出資を受ける際のアドバイス」をまず問います。
自分の貯金と友人からの出資でスタートしたネイルサロンを多店舗展開すべく、4年目に銀行から融資を受け、さらに9年目にVC(ベンチャーキャピタル)から出資を受けた株式会社ノンストレス代表取締役・坂野尚子氏。「銀行は横並びのようで実は違う。最終的には担当者による」といい、「1年に2回、お正月と決算報告にお付き合いのある5行全て回るようにして」関係性を築いていると語ります。
アットコスメを立ち上げて1年目に事業モデルのプランに対して3000万の出資を受けた株式会社アイスタイル取締役(共同創業者)山田メユミ氏は、その後3億の追加出資を受ける予定がネットバブルが弾けたことによって頓挫。「個人でも借金をし、ぎりぎり首の皮1枚で、エンジェル投資家との出会いがあって1億を小切手でいただくという経験をしました」と、当時のご苦労を語ります。
加えて、「店舗の拡大に注力していると、やはり融資は外せない。それがないと事業成長は描けない」にも関わらず、「多くの女性起業家と話すと融資や投資のスキームを意識していない方が多い」という指摘も。
それを受けてVCを運営する佐藤氏は、VCファンドの運用期間が大抵が10年(期間延長しても12年)であることや、金融機関や事業会社より資金を預かって運用している以上、パフォーマンスを出すことは大命題であるため「短期間で成長することを期待できる先にしか、投資しづらいというのは正直ある」とします。さらに女性経営者は地道に積み上げてきた実績をプレゼンをしがちだが、大きなゴールを描いて、多少のビッグマウス感があった方がいい場合も多いとアドバイスも。
アメリカから日本に本社を移し、2000年当時としては「かなり巨額」の投資をVCから受け、2008年には東証マザーズに上場させたネットイヤーグループ株式会社の代表取締役社長(CEO)石黒不二代氏は、「融資なのか投資なのか無借金経営なのかは、ビジネスモデル次第」と力説。
たとえば、製造業ならラインを増やすとか工場を作るとか、無借金では成り立たない。また、融資と投資の違いは、たとえば街で1軒こだわりの自転車店をやりたいなら融資、いま自転車流行っているから全国展開して規模を目指すなら投資と、噛み砕いて説明します。
さらに突っ込んだ話が続出し、融資の金利について、投資の株の比率についてなど、この登壇者たちでなければ聞くことのできない内情や経験、知見がシェアされます。
「どうやら男性の起業家コミュニティって、こういうことをすごく話し合っているそうですよ。ビジネスモデルだけじゃなくファイナンスは会社にとってすごく重要なので、女性起業家ももっと知識の共有した方がいいなと思います」と、石黒氏。
終始、熱く濃密な時間が流れ、会場とのインタラクティブなディスカッションでは高校生からの質問も飛び出します。どの問に対してもメンタリングのように細やかに、具体的なアドバイスや温かい激励が、登壇者から返されました。
最後の2分では登壇者から一言ずつメッセージが。
佐藤氏は、「投資にしても融資にしても、結局は自分が実現したいことを成し遂げる戦略の一つなので、うまく金融機関ともお付き合いしていただきたい」。
「金融機関を味方にする。そのためには上手いプレゼンをしっかり整理して考えて」と坂野氏。
「企業のステージによって調達の方法も違ってくる。今は融資、ここは投資、と成長するに従って違った形のファイナンスが必要であり、そこをしっかり判断して」と石黒氏。
山田氏は、「順風満帆にいく事業なんてない。諦めたら終わりで、運を呼び寄せるためにも、信念を持って粘り強くやるしかない」と力を込めて語り、セッションを締めくくりました。
1995年東京理科大学基礎工学部生物工学科卒。化粧品メーカー在職中、個人の趣味で始めたメルマガへの反響をもとに、コスメ情報サイト『@cosme』を企画立案。サイト立ち上げに参画し、1999年株式会社アイスタイルを共同創業。現在も同社取締役を務めるほか、2016年には未就業女性のスキルアップおよび就業支援を目的とした株式会社ISパートナーズを立ち上げ、代表取締役を兼任。また、経済産業省・産業構造審議会消費経済部会基本問題小委員会委員、総務省・情報通信審議会委員、内閣官房・知的財産戦略本部有識者本部員等も歴任。「Forbes JAPAN」が主催する『Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2017』において、個人部門で「グランプリ」を受賞。
1994 年アメリカ・シリコンバレーでテクノロジーに特化したコンサルティング会社Alphametrics Inc.を創業、社長に就任。1999年Netyear Group,Inc. 取締役、ネットイヤーグループ株式会社取締役を経て、2000年5月より現職。2008年には東証マザーズに上場させた。内閣官房 「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」 本部員、経済産業省「産業構造審議会」の委員などの公職も務める。著書や寄稿多数。フジTVの「新報道2001」やNHKの「Bizスポ」などでコメンテーターを務める。スタンフォード大学経営学修士(MBA)、名古屋大学経済学部卒。
ICU卒業後、フジテレビアナウンサー、NY特派員を経て、コロンビア大学MBA取得。KPMG勤務後、94年㈱キャリア戦略研究所起業後、96年「ザ・クイック」(05年より「ノンストレス」に社名変更)を設立。ネイルサロン「ネイルクイック」、「スパネイル」(NYにも開店)を全国展開、一方、ジェルメーカーとして、「ネイルパフェジェル」を製造、国内外へ販売。著書に「女三十歳、ひとり海を渡る」(あき書房)、「女性の知らない7つのルール」(監訳・ダイヤモンド社)、「キャリアカウンセラーが教える“いい仕事”ができる女性」(PHP文庫) 等。経産省産業構造審議会委員等。夫、娘一人。
2000年に株式会社サイバーエージェントに新卒1期生として入社。インターネット広告事業にて初の女性マネージャーとなり、営業に加えて採用や組織作りなどに貢献。子会社を経て、2006年から株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ (現:サイバーエージェント・キャピタル)にて9年間ベンチャー投資に従事。2016年2月、独立系のベンチャーキャピタルである株式会社iSGSインベストメントワークスを立ち上げ、取締役 代表パートナーに就任。独立系VCでは日本初の女性パートナーとなる。 1号ファンドを立ち上げ、国内外の64社への投資を行っている。経済産業省のJ-Startup推薦委員、文部科学省の科学技術・学術審議会 産業連携・地域支援部会委員、次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)の推進委員や城南信用金庫、第一勧業信用組合の評議員などをつとめている。
開催日時 | 令和元年11月30日(土)13:00~19:30 |
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会場 | 品川プリンスホテル プリンスホール 東京都港区高輪4-10-30 品川プリンスホテル アネックスタワー5階 |
参加対象 | 企業・団体の代表者と経営層、個人事業主など(男女不問) |