レポート
日本マクドナルドの社長兼CEOに就任以来、ビジネス基盤を徹底的に強化し低迷していた業績を復活させたカサノバ氏の講演。2017年度には一店舗当たり平均月商が上場以来最高水準、2019年上半期は過去最高の経常利益を達成するまでに至った「V字回復」のサクセスファクターや、ビジネスの進化のために重要なポイントが示されました。
1971年の日本進出以来40年の月日を経たマクドナルド。2010年頃から徐々に低迷を始め、更に2014年・2015年には食の安全安心に関わる問題に直面するなどビジネスは厳しい局面を迎えていました。当時日本マクドナルドの社長兼CEOに就任したカサノバ氏は、その要因を「成功の呪い、つまり“自己満足”」だったとします。そこからの脱却をするために、「どん底まで行ったら、後は上を向いて行くしかない」と考え、「改善を起こすには最高のタイミング」と立ち上がります。お客様との信頼関係を再構築し、どのようにリカバリープランを策定し、いかに実行、成功に導いたのでしょうか。
まず、カサノバ氏が「どのビジネスにおいても成功するための一番の要素」と強調したのは、「お客様の声に耳を傾けること」。実際に、自ら47都道府県に出向いて直接お客様の声を聞いて回ります。その「お客様の声」と向き合って検討を重ね、策定されたのが、4つの柱に注力するビジネスリカバリープランでした。
「お客様にフォーカスしたアクション」、「店舗投資の加速」、「地域に特化したビジネスモデル」、「コストと資源効率の改善」という4つの柱の一つ一つについて、カサノバ氏は丁寧に解説します。食の安全と品質、メニュー、バリュー、クオリティ・サービス、カスタマーエンゲージメントなどにどう取り組んだか。6400万ダウンロードを達成した公式アプリ(2019年11月30日時点)、店舗改装、さらにそれまで「本社」と呼ばれていた新宿オフィスを「ナショナルレストランサポートオフィス」と改称し店舗のサポート機能を強化、そしてあらゆる製造ラインを見直してコストと資源効率を改善したこと……。ひとつひとつのプロセスに大きくうなずく観客の姿があります。
2つ目の成功要因を、カサノバ氏はこう力説します。「どんなプランであっても、それを実行する人がいなければ、単なる紙上の戦略になってしまう。だからこそ私たちにはスタッフ一人ひとりのコミットメント、そしてチームワークが必要。これはいかなるビジネスであっても同じだと思います」。
日本マクドナルドでは、「Power of One」という新スローガンのもと、インターナルコミュニケーションを抜本的に刷新。3本足の椅子と呼ばれるフランチャイズのオーナー、サプライヤー、日本マクドナルドのスタッフ・オペレーターの4000人を集め、戦略を共有するミーティングを開催し、ワンチームとしての団結感とコミットメントを醸成しました。こうした改革により、一店舗あたりの平均月商、お客様満足度などにおいても上場以来最高水準を記録することができたといいます。
お客様の声をよく聴き、それに基づいたプランを策定する――。そのプランをしっかりワンチームで実行する。この2つのベーシックなことの大切さを再度強調しつつ、最後にカサノバ氏は、「これからもa betterマクドナルドになりたい。より良いお客様の店舗体験への道のりには決して終わりはない」と明言。会場の女性経営者たちへの示唆に富んだ、パワフルな基調講演となりました。
カサノバ氏のリーダーシップのもと、日本マクドナルドは2016年よりビジネス基盤を強化、2017年度の一店舗当たりの平均月商は上場以来最高の水準となり、2019年上半期は上場以来過去最高の経常利益を達成。1991年マクドナルド・カナダに入社、マクドナルドには28年の在籍。内22年はカナダ国外で要職を歴任している。ロシアで最初のマーケティング・ディレクターに就任、その後トルコ、ウクライナ、ベラルーシ、カナダ、マレーシア、日本で勤務。日本には2004年から2009年CMOとして勤務。その後、2009年にマレーシアのマネージング・ディレクターに就任、2013年より日本マクドナルドの社長。2019年より現職。カナダ国籍でカナダ・オンタリオ州マックマスター大学でMBA取得。
開催日時 | 令和元年11月30日(土)13:00~19:30 |
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会場 | 品川プリンスホテル プリンスホール 東京都港区高輪4-10-30 品川プリンスホテル アネックスタワー5階 |
参加対象 | 企業・団体の代表者と経営層、個人事業主など(男女不問) |