レポート
経営者として企業の価値をどう伝えるか、ブランドを形成するためには何が必要か、効果的な広報とは何か。ワークライフバランス、エシカルジュエリー、PR事業の最前線で成功を収める3人の女性経営者が、自らのストーリーを語りつつ、課題解決への多くのキーワードが示されました。
はじめに、ファシリテーターをつとめる田中里沙氏は、「長い時間をかけてブランドになるものもあればスピーディに支持されてブランドになるものもある」と言い、いずれも「ブランドは情報によって作られている」と、議論の口火を切ります。
エシカルという言葉が日本ではまだ認知されていなかった10年前に、「身に着ける人も作る人もみんなが笑顔で幸せである」エシカルジェリーブランドを立ち上げた株式会社HASUNA Founder & CEOの白木夏子氏は、当時をこう振り返ります。「ブランドコンセプトがなかなか伝わらなくて、展示会に出してもエシカルという言葉の説明だけで終わってしまった」
そこで白木氏は、できるだけ多くの取材を受け、それが徐々にメディアで取り上げられるようになり、「少しずつ波が来て」認知が広がったことに触れます。さらに、エシカルを世の中に広めようと共感した人たちが、ブログや講演会などの活動を通じて広めてくれたことを挙げます。
ワーク・ライフバランスという会社を立ち上げて14年目。1000社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、「14年間ほぼ増収増益」という小室淑恵氏は、「自分たちが実践してきたことが一番のブランド」と明言。「全従業員残業ゼロ、有休消化100%を14年続けてきて、ほぼ毎年増収増益。売り上げと働く時間は関係ない。むしろ短い時間で、それぞれの多様なライフが混じり合うからこそ、今までにないイノベーションが起きるんだということを自社で実現しながらお客様にお伝えする。そこが他社にはないブランディングになった」とパワフルに語ります。
この発言を受けて、株式会社サニーサイドアップ代表取締役社長の次原悦子氏は、「小室さんは、小室さんというブランドなんだと思う」と言い、一方で自分自身については「表に出るべきではないという信念で、日陰の女をずっと貫き通してきた」。しかし、2018年に東証一部に鞍替えしたこともあり、社員や今後の事業のために「少しずつ会社の名前だけは世の中に伝えていかなくちゃいけないと思っています」。
「情報をどこまで出してどこまで出さないかというのも、広報戦略」と田中氏が口にすると、「まさにそれがブランド」と次原氏。絶妙なやりとりが続き、あっと言う間にセッションは後半へ。会場とのインタラクティブな時間となりました。
「代表が女性であることを打ち出すのが、企業の成長にとってプラスになるのか」との質問には、小室氏が「私のビジネスの場合は女性が強み」と言い、そのうえで「きちんとプラスにしていくためには説得力、プレゼン力が必要」と強調。90分から20分、12分、ついには2分へと、ステージが上がるにつれてプレゼン時間の短縮を求められた経験を語り、「その1回で人生が変わるので、そこをやりきって次にいく」準備をしておく大切さを伝授します。
次原氏は、「正直言って、男も女も別にない」としつつも、国として202030(*注)に舵を切るなら「私たち女性にはすごく大きなチャンス。そこは思いっきり利用して!」と激励。さらに白木氏のジュエリーが広まったように、「女性同士が互いにティーアップすることが大事な成功ポイント」だとも指摘します。
活発な質疑応答が繰り返される中、クロージングの時間に。熱く濃いディスカッションの最後に、田中氏はこう締めくくりました。 「パッションがないと事業は出来ないけれども、熱い思いだけを語っても引かれてしまうことがある。よく周りの環境を見て、相手の立場を見極めながら、相手の論理の中に入って自分の会社の価値や提供するサービスを伝えていくことが大事。伝える言葉はわかりやすく面白く。それがきちんと伝わると広報の成功になり、仲間や味方を増やす活動にもなる」
*注202030:社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標
17歳で同社を創業。以来「たのしいさわぎをおこしたい」をスローガンに様々な企業のPRを手がけてきたほか、独自のPRノウハウを用いて中田英寿や北島康介といったトップアスリートをマネジメントし世に送り出した。近年では大晦日の渋谷カウントダウンといった大規模なプロジェクトを手掛けるほか、シドニー発のオールデイダイニング「bills」の運営など多岐に渡る事業を展開。日陰感はないが日陰の女。だからメディアに顔は出さないが、検索すると顔が出てくるのが悩み。2008年に新規上場後、2018年に東証一部銘柄指定を実現。二児の母。現在独身。
1000社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げる「働き方見直しコンサルティング」の手法に定評がある。安倍内閣産業競争力会議民間議員、経済産業省産業構造審議会、文部科学省中央教育審議会などの委員を歴任。著書に『プレイングマネージャー「残業ゼロ」の仕事術』(ダイヤモンド社)『働き方改革生産性とモチベーションが上がる事例20社』(毎日新聞出版)『6時に帰るチーム術』(日本能率協会マネジメントセンター)『マンガでやさしくわかる6時に帰るチーム術』(日本能率協会マネジメントセンター)等多数。「朝メール.com」「介護と仕事の両立ナビ」「WLB組織診断」「育児と仕事の調和プログラムアルモ」等のWEBサービスを開発し、1000社以上に導入。「WLBコンサルタント養成講座」を主宰し、1600名の卒業生が全国で活躍中。私生活では二児の母。
英ロンドン大学卒業後、国際機関、投資ファンドを経て2009年に株式会社HASUNAを設立。ジュエリーブランドHASUNAでは、ペルー、パキスタン、ルワンダほか世界約10カ国の宝石鉱山労働者や職人とともにジュエリーを制作し、エシカルなものづくりを実践。 2018年には”パートナーシップのあり方を問い直す”をコンセプトに掲げたプロジェクト《Re.ing[リング]》をクリエイターの高木新平氏とともに立ち上げる。セレクトショップ《PIMLICO No.72[ピムリコ]》のディレクション、ギルドフリー(=罪悪感のない)のスイーツFOOD JEWERYや、ランジェリーナオランジェリーのブランドディレクションを手掛ける。日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011キャリアクリエイト部門受賞。2013年には世界経済フォーラム(ダボス会議)にGlobal Shaperとして参加。2014年には内閣府「選択する未来」委員会委員を務め、Forbes誌「未来を創る日本の女性10人」に、2017年にはCNNが選んだ日本人女性「リーディング・ウーマン・ジャパン」に選出。
1993年宣伝会議に参画し、1995年月刊『宣伝会議』編集長就任。2003年より環境コミュニケーション誌「環境会議」、哲学の雑誌「人間会議」編集長を兼任。広告専門新聞「アドバタイムズ」を創刊し、2011年より編集室長としてメディアを統括。2012年事業構想大学院大学教授就任とともに、大学出版部部長として月刊「事業構想」を創刊。2016年より事業構想大学院大学学長に就任し、新事業創出、事業承継、地域ブランド、リカレント教育の研究と教育に取り組む。
第32地方制度調査会、財政審議会、中央環境審議会、社会資本整備審議会の委員等を務める。日本郵便社外取締役。 新聞雑誌のコラム執筆、情報報道テレビ番組のコメンテーターなどを務める。現在は「ひるおび!」(TBS)木曜レギュラー。
開催日時 | 令和元年11月30日(土)13:00~19:30 |
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会場 | 品川プリンスホテル プリンスホール 東京都港区高輪4-10-30 品川プリンスホテル アネックスタワー5階 |
参加対象 | 企業・団体の代表者と経営層、個人事業主など(男女不問) |