レポート
社会課題を解決するというミッションの下、歩み続けるNPO法人。その道のりを、具体的な事例を踏まえながら話し合っていきます。登壇するのは、日本のNPO法人を代表する3人の女性経営者たち。そして、日本ベンチャー学会 事務局長の田村真理子氏がファシリテートを務めます。
初めに、田村氏よりNPO法人の制度について、経緯が語られました。
「1998年の特定非営利活動促進法、2012年の法改正では財政が改善されて事業拡大を目指せる方向に行き、2015年からはSDGsによってNPO法人の意味の深さが改めて注目を集めています。そんな流れのなかで、今はどんなお仕事をされているか、事業規模も含めてお話いただければと思います」
2009年に設立された認定NPO法人キッズドアは、日本の子どもの貧困を解決するための活動を展開してます。理事長を務める渡辺由美子氏は、「登録されている子どもの無料学習支援、食料支援等を行っています。2020年度は、事業規模としては6億1300万円ぐらいですね。1年前が4億円台だったので、私たちも非常に驚いております。」と、現状を語ります。
1999年、NPO法人として登記を完了した第1号が、スポーツに関わる女性を支援するNPO法人ジュースです。理事長を務める小笠原悦子氏は、2006年の「世界女性スポーツ会議」誘致を皮切りに、さまざまな活動を推し進めています。
「1999年当時は、スポーツにおける男女共同参画という考えが全くない時代。女性アスリートをサポートし、リーダーを作ろうという形で始めました」
現在は、順天堂大学の女性スポーツ研究センターのセンター長としても活躍されています。
1997年、世界的なムーブメント「児童労働に反対するグローバルマーチ」をきっかけに発足されたNPO法人ACE。代表を務めるのは、岩附由香氏です。
「これまで、ガーナとインドで2,360人の子どもたちを児童労働から解放し、13,500人の子どもたちの教育環境を改善してきました。今、事業規模的には、1億5000万円くらい、そのうち7000万近くが事業収入で、6000万円ぐらいが寄付の収入です」
事業規模の話から、田村氏が「財政については?」と議論を深めていきます。「主な収入源として、ひとつは寄付。あとは企業の財団から助成金などをいただいて運営しています」と渡辺氏。岩附氏は「寄付・会費に加え、JICAからの委託事業が多くなっていて、あとは企業研修や講師派遣など事業収入を得るビジネスモデル」とのこと。小笠原氏も「世界女性スポーツ会議を誘致する前、第一回のアジア女性スポーツ会議を大阪で開催したときは、大阪市と、企業のスポンサーシップでした」など、具体的な事例を話してくださいました。
さらに「寄附を得るためには?」「組織のマネジメントは?」「海外との違いは?」と田村氏が鋭く切り込みながら、貴重な体験がシェアされていきます。後半では、参加者からの質問も受け付けます。「行政や公共団体の継続的な仕事をどのように獲得し、継続しているのか」「寄付を集める段階では、何から始めれば?」「プロモーションの成功例は?」などの課題が投げかけられ、登壇者とともにヒントを探っていきました。
最後に、登壇者から参加者へ呼びかけます。岩附氏は「私はDDBDという言葉を紹介したいと思います。Dream、社会を良くするような大きな夢を描こう。Discover、機会を捉えて自分の強みを生かそう。Believe、自分を信じてほかの人も信じよう。Do、今すぐやろう。NPOが社会を動かすには、これが大事」。小笠原氏は、「絶対にこういう世界が必要で、だから力貸してと、言い続ける。そしてAct now、Believe myself、これがすごく重要」。渡辺氏は「多様な方を巻き込みながら柔らかくやっていくというのは、女性にはすごく向いている。是非いろいろなコミュニケーションをしながら、活動を広げてください」と、それぞれに心に響くメッセージをくださいました。
「これまでの企業の価値、利潤というものだけではもう測れない価値の測り方を、NPO法人がまさに率先して進めているがゆえに、今注目を浴びている、そして社会を動かすんだというエネルギーに変わっているのではないかと思います」と、田村氏がまとめます。社会を変える想い、そして財政などの現実とも、しっかりと向き合って議論したセッションでした。
14~16歳まで米国ボストンで過ごし、桐朋女子高等学校卒業。上智大学在学中、米国留学から帰国途中に寄ったメキシコで物乞いする子どもに出会い、児童労働と教育を研究テーマに大阪大学大学院へ進学、国際公共政策修士号取得。在学中にカイラシュ・サティヤルティ氏(2014年ノーベル平和賞受賞)の呼びかけた「児童労働に反対するグローバルマーチ」をきっかけにACEを発足させる。その後、NGO、企業、国際機関への勤務やフリー通訳を経て、2007年よりACEの活動に専念。国際協力NGOセンター理事、児童労働に反対するグローバルマーチ理事、エシカル推進協議会理事。2019年大阪G20サミット開催にあわせて世界の市民社会組織で構成されたC20(Civil 20)では1年間議長を務めた。
オハイオ州立大学にてスポーツマネジメントで博士号(Ph.D.)を取得。スポーツに関わる女性を支援するNPO法人ジュース(JWS)理事長。博士課程入学以前は、水泳コーチとして活躍。1988年のソウルオリンピック大会では、競泳競技のシャペロンとしてコーチングスタッフとして参加。2006年「世界女性スポーツ会議くまもと」では、国際女性スポーツワーキンググループ(IWG)の共同議長を務め、現在もアジア大陸代表IWGグローバルエグゼクティブメンバー。アジアスポーツマネジメント学会会長(2018〜2021)。本年度から日本フェンシング協会理事に就任。2004年エイボンアワーズ・トゥ・ウーメン功績賞受賞。2018年度JOCスポーツ賞(女性スポーツ賞)受賞。
㈱日本経済新聞社、㈱日経BP社を経て、現在、日本ベンチャー学会事務局長。早稲田大学アントレプレヌール研究会理事、早稲田大学女子大生起業家交流会代表。
経済産業省、文部科学省等政府委員等。主にベンチャー企業や起業家に関する調査・取材を手掛けながら、起業家教育や事業創造論、事業計画、キャリアクリエイト等を早稲田大学、上智大学、事業創造大学院大学等で担当している。
千葉大学卒。大手百貨店、出版社を経て、フリーランスのマーケティングプランナーとして活躍。 配偶者の転勤に伴い一年間イギリスに移住し、「社会全体で子どもを育てる」ことを体験する。2007年任意団体キッズドアを立ち上げ、2009年内閣府の認証を受けて特定非営利活動法人キッズドアを設立。日本の全ての子どもが夢と希望を持てる社会を目指し、活動を広げている。2016年第4回日経ソーシャルイニシアティブ大賞国内部門ファイナリストに選ばれる。2018年5月、初めての著書『子どもの貧困~未来へつなぐためにできること~』(水曜社)を上梓。内閣府 子供の貧困対策に関する有識者会議 構成員。厚生労働省社会保障審議会・生活困窮者自立支援及び生活保護部会委員。一般社団法人全国子どもの貧困・教育支援団体協議会副代表理事。
開催日時 | 2021年11月1日(月)13:15-18:30 |
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会場 | オンライン開催(ZoomとYouTubeによるライブ配信) |
参加対象 | 企業・団体の代表者、経営者層、個人事業主など(男女不問) |