レポート
「ここは、『おしゃべりターイム』という感じで!」と、笑顔で登場したのは小島慶子氏。そして、基調講演でも登壇された小室淑恵氏、(株)イー・ウーマン代表取締役社長の佐々木かをり氏です。「猛者中の猛者のお二人(笑)」という小島氏の言葉に、小室氏と佐々木氏も思わず吹き出し、オープンな雰囲気のなかでのトークショーがスタートしました。
進行を務める小島氏がまず切り出したのは、「経営をする喜びとは?」。小室氏は「私たちの会社は『日本の働き方を変える』ということが一番大きなミッションで、ここに突き進めるというのがまず大きな喜びです。そして個人的には、自分の大好きな、ホームのように心を許せる社員と仕事ができるということ。これは自分で会社を経営している人にしかない喜びで、一番よかったなあと思うことですね」と笑顔で答えます。
佐々木氏も「そうですね」と共感します。
「私たちの会社のミッションは、ダイバーシティ視点でイノベーションを作るということ。女性活躍だけでなくて、いろいろなものの見方が集まることで、商品が生まれたり、いい政策ができたり、組織がより良くなっていったりするという、まさに社会にも企業にも役立つことだと思っているんですね。これは1人ではできないことなので、一つひとつの情熱をチームでカタチにしていく。そのときに『前進した』と感じることが喜びかな、と思います」
「やりがいがあるだろうなと思う反面、大変なこともありますよね。お二人は、リスクとの付き合い方についてはどうされているんですか?」と小島氏が尋ねると、小室氏は「失敗は結構たくさんありますよ」と日々を振り返ります。
「何かが起きたらそれは『仕組みを恨もう』というのが、私たちの合言葉(笑)、誰かを責めても組織には全然いいことがないので、仕組みをブラッシュアップするルールにしているんですね。15年やってきて思うことは、心理的な安全性を高めることが、結局、業績につながるということです」
何度もうなずき、「本当ですよね」と答える佐々木氏。「仕組みを作ったり、トライアンドエラーをしながらやって来ているというところがベンチャーの良さだと思うんですね。そして社長という意味では、『覚悟』かな。何かが起きるに決まっているんですが、社長は逃げることはできない。何かが起きたときに、1秒後には『じゃあどうするか』という心構えで臨む。それが、社長とそうでない人の大きな違いかもしれないと思います」
話題はさらに、子育て中に悩んだことなど、個人的な事情と経営との関連に展開していきます。小島氏は「トップが家庭の事情を抱えているとき、それが男性であっても、悩む姿を社員に開示し、自分が実践したことを会社のルールにしていけば、働き方が楽になりますよね」と、男性リーダー像についても言及していきます。
「事業を大きくすることについての考えは?」と小島氏が問いかけると、小室氏は「事業規模は毎年かなり大きくなっていますが、人を上手に育成できないまま拡大すると成果につながらないので、人数を一気に増やさないようにしています。その分、ノウハウを外に発信して、働き方改革を加速する。ここは絶対に譲れない。社員の人数や会社の規模などではないことを確認し合いながらきたという感じです」とのこと。
佐々木氏も「今までは企業のバリューを売り上げや成長率、人数とかで見てきたわけですけれど、ESG投資が注目される今は非財務、どれだけ世の中の役に立っているのかで見るようになりましたね」と共感します。そして新たな企業価値を計る指標として大手企業などが次々と参加している、自社で開発したダイバーシティ進度を数値化する仕組み「ダイバーシティインデックス」を紹介。「見かけ上のダイバーシティにだまされないように、ということですね。『いやあ、女性社員が3割超えると会社が華やぐねー』みたいな人とか」と小島氏が言うと、「そうそう!」「いますねー!(笑)」と、2人とも大きくうなずきます。
そして最後に、「社員と社員の家族、自分自身のハッピーを追求していくことは、ビジネスがサステナブルに発展することにつながる。自己犠牲をせず、ハッピーに経営を」と小室氏。「どうやって相手の役に立つのか、どう話すのかもとても重要。相手が使いやすいように伝えることをみんながすると、多様性がいち早くカタチになるのでは」と佐々木氏。真剣に語り、そして笑いも絶えない、前向きなパワーにあふれたトークショーでした。
エッセイスト、東京大学大学院情報学環客員研究員、昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員
学習院大学法学部政治学科卒業後、TBSに入社、アナウンス職として15年間勤務ののち独立。現在は東京と、家族の暮らすオーストラリア・パースの2拠点生活。日本国内では女性のキャリアやワークライフバランス、ジェンダーに関する講演、執筆およびメディア出演などの活動も数多く行う。第36回ギャラクシーDJパーソナリティ賞受賞。連載:『AERA』『日経ARIA』『VERY』他多数。著書『解縛(げばく)』『るるらいらい~日豪往復出稼ぎ日記』、小説『ホライズン』他多数。
1000社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げる「働き方見直しコンサルティング」の手法に定評がある。安倍内閣産業競争力会議民間議員、経済産業省産業構造審議会、文部科学省中央教育審議会などの委員を歴任。著書に『プレイングマネージャー「残業ゼロ」の仕事術』(ダイヤモンド社)『働き方改革生産性とモチベーションが上がる事例20社』(毎日新聞出版)『6時に帰るチーム術』(日本能率協会マネジメントセンター)『マンガでやさしくわかる6時に帰るチーム術』(日本能率協会マネジメントセンター)等多数。「朝メール.com」「介護と仕事の両立ナビ」「WLB組織診断」「育児と仕事の調和プログラムアルモ」等のWEBサービスを開発し、1000社以上に導入。「WLBコンサルタント養成講座」を主宰し、1600名の卒業生が全国で活躍中。私生活では二児の母。
大学卒業後に通訳や翻訳を提供するコンサルティング会社ユニカルインターナショナルを、2000年に「ダイバーシティ視点でイノベーションを起こす」をミッションにイー・ウーマンを起業。日本初のダイバーシティを数値化する「ダイバーシティインデックス」を発案するなど、ダイバーシティをテーマに国内外で数多くの講演をしている。内閣府規制改革会議を始め、経済産業省、総務省、厚生労働省、法務省、文部科学省など政府各省の審議会等で委員をつとめている。2018年には世界銀行主催の女性起業家を応援する組織We-Fiの日本代表チャンピオンに任命、さらに世界の2000名の女性経営者が所属する世界女性経営者組織(WPO)の日本支部代表に就任するなど、女性起業家・経営者をリーディングしている。
開催日時 | 2020年11月16日(月)13:30-18:30 |
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会場 | オンライン開催 |
参加対象 | 企業・団体の代表者、経営者層、個人事業主など(男女不問) |