WEB連載
前回はみなさんに起業までの経緯を聞きました。今回は実際の融資状況について教えてください。大桃さんは当初、「融資を受けることまで考えが及ばなかった」とのことですが、いつから融資を受けたのですか。
私が融資を受けたのは創業3期目でした。教育事業ということもあり、それほど初期投資が必要なわけではないので、2期目までは受けていませんでした。
ということは、それまでは自己資金で経営していたと。
創業3期目で融資を受けた理由は何ですか。
市場が伸びそうだという手応えがあったからです。実は創業1期目は私自身も副業・兼業を行うサービス会社とのパラレルキャリアでした。でも、やはりこちらの越境事業にフルコミットしようと思ったのが創業3期目でした。そうすると顧客も増え、「これはある程度、銀行に残高がないといけないのでは」と思うようになりました。
「キャッシュを持っておかないと」というのは、売上よりも先に出て行くキャッシュがあったのですか。
そうですね。当社の場合は研修事業ですので、企業が1年間のうちで「研修がしやすい時期」「繁忙期で難しい時期」があります。そうなると売上が増えるのが秋冬、春先は売上が減り、夏に向かって厳しい時期が続きます。まさに私が融資を受けたのも3月でした。まず300万円の融資を受け、当初の金利は0.35%、それを7年間で返済する計画でした。融資の資料に「金利0.35%〜」と書いてあるけれども、それは一番低い金利で、自分はその利率では借りられないと思っていたので、本当に借りられたことに驚きました。
300万円というのは希望した額でしたか。それとも本当は600万円ぐらいを希望していたのに、半分の300万円になったのでしょうか。
私からは金額の提示はしませんでした。でも、融資機関から見たときに弊社の社会的価値は300万円ぐらいあると教えてもらったようで、ありがたかったです。事業で資金調達をしている人であれば、ベンチャーキャピタルなどアドバイスをしてくれる人がいると思いますが、私は初めての起業で、この先もどう事業が伸びていくか分からない、ちょっと一人では大変だと思っていたときだったので、銀行の担当者が評価してくれたことで「仲間が増えた」と感じました。
融資機関は査定されるだけではなく、親身に相談に乗ってくれる場でもありますよね。阪根さんは創業当初から融資を受けたのですか。
はい。最初は政策金融公庫で600万の融資を受け、利息2%代、返済期間5年だったと記憶しています。その後も融資を受けていますが、昨年は過去最大の10億円の出資を受けました。
(一堂)10億円! それはすごいですね。
融資を受けない人のなかには「小さく始めたい」「お金を借りることが怖い」と思っている人もいますが、ビジネスによっては借り入れをしてキャッシュを持っておかないと事業そのものが立ち行かなくなる場合もあります。必要なときにはやはり受ける必要がありますね。
私も最初の融資を受けて半年後に、「借りられてよかった。借りていなかったら息切れしていたかも」と思いました。
私は女性起業家に向けたセミナーなどに登壇するときは「融資は車のガソリンだと思ってください」と言っています。ガソリンが満タンであれば、目的地まで余裕を持って到達できます。もし、自己資金など半分ぐらいのガソリンしかないと、ビジネスで利益が出ても使ってしまい、不安なまま目的地まで向かうことになります。
ビジネスでは「ちょっと道を間違えた」「予定外のルートを通ることになった」という事態も起こります。ガソリンを満タンにしておくと安心ですよね。
私も融資を受ける前は「怖い」「きちんと返せるだろうか」と不安でしたが、弊社研修の参加者から「それは勉強代だよ」と言われました。みなさん50代で、さまざまな人生経験がありますから深みのある言葉でした。
融資を受けると利息が発生しますが、私の場合はトータルでも3〜4万円でした。これなら確かに勉強代の範囲だと思いました。
「融資を受けると事業に規律が生まれる」という人もいます。決して返済のためにビジネスをしているわけではありませんが、「きちんと返さなくてはいけない」という適度なプレッシャーがあるほうがいいという人もいますね。
融資はビジネスも、創業者のメンタルも後押ししてくれますよね。私は創業当初は売上がそれほど立たず、事業拡大をしたいものの、なかなか最初の一歩が生み出せませんでした。でも、融資を受けられたおかげで、やっと事業のための在庫を仕入れ、社員を採用しようと思えました。
融資と聞くと条件反射的に「怖い」と思う人もいるかもしれませんが、まず日本にはこれだけ公的機関の融資制度が充実していると知るのも大事ですね。確かに利息も発生しますが、それは「経費の一環」とも考えられます。例えば広告費を使っても、それを上回る利益が出れば問題ありません。ただ、「怖い」「利子がもったいない」と思うか、「必要経費」だと思える経営者脳になれるかどうかが問われると思います。
石川県出身。立命館大学卒業。在学中に UBC(ブリティッシュコロンビア大学、カナダ)に留学。 卒業後、スターバックスコーヒージャパンに入社。新店舗立ち上げ、人材育成などを経験後、P&G、アストラゼネカ、医療機器メーカー、薬事コンサルと外資系企業で経営企画、マーケティングに携わる。スターバックスコーヒージャパンでストックオプションを得たことがきっかけで始めた株取引の趣味が高じて、独立後に株スクールの講師を務めたのち、2020年2月に株式会社A&Iを創業。「エンジェル投資家の存在が当たり前の社会に」を掲げ、起業家やベンチャーの志を投資家につなぐコミュニティーを運営。iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授。
新潟県生まれ。東京外国語大学(中国語)卒業、慶応義塾大学大学院社会学研究科修了。三井化学にて人事・事業企画に約10年従事。工場からキャリアをスタートし、国内外関係会社を含むグループ全体の人材開発、中国、韓国での新会社設立プロジェクト、赤字事業の再構築などに携わる。2020年に40代50代ミドルシニアに特化したキャリア自律×地方への越境学習事業を創業。組織の中で、年齢を重ねるだけで、活躍する場が限られることに「もったいない」と感じ、もう一度持てる力を存分に発揮するきっかけを作り、「年を取るってかっこいい」と思える日本社会にしたい。地方企業×都市部人材副業兼業マッチングサービスJOINS取締役(2020年4月〜21年9月)、国家資格キャリアコンサルタント、新潟県にいがた産業ビジョン検討委員など。プライベートは2児の母。
早稲田大学大学院卒業後、新卒にてリクルート(旧リクルートエージェント)に入社し、営業、人事部を経て、アジアンブリッジを創業。起業当初は日系スタートアップの海外進出コンサルと海外拠点の責任者として事業の立ち上げを行う。その後、2016年から今のアジアンブリッジのメイン事業となる日本ブランドの海外流通支援事業をスタート。日本企業の国境を越え流通の最大化に貢献するスペシャリストとして、ECのみならずリアル店舗などの現地マルチチャネルの流通を通じて最適な展開を提案。日本のビューティー&ヘルスケアのブランドを中心にのべ100億以上の流通を実現してきた。NBC国際アントレプレナー賞受賞、JETRO認定コンサルタント。
日本企業の台湾・タイをはじめとするコンサルティング事業。
1980年東京都清瀬市生まれ、神奈川県相模原市出身。青山学院大学経営学部卒。
スタートアップの融資支援のINQ代表取締役CEO。VC・エンジェル投資家、起業家からのスタートアップをご紹介頂き、融資による資金調達を累計1200件超、87億円以上を支援。東京都ASAC・NEXsTOKYOなどの自治体のアクセラレーションプログラムのメンターのほか、複数のスタートアップの社外CFOを務める。 趣味は音楽とお弁当作り。4児の父。