東京都女性経営者会員登録はこちら

Follow us

  • Facebook

セミナー

TOKYO女性経営者塾 by N E W
第3回 「好きなこと」を仕事にして​成功を収める

日時 2024年10月1日(火)17:00〜19:00
講師 株式会社ランクアップ 代表取締役
岩崎 裕美子
進行 一般社団法人WE association 理事
株式会社A&CO 代表取締役社長
三竹 麻子

たった一人の悩みを解決する製品で、世界中の人を幸せに

「TOKYO女性経営者塾 by N E W」テーマ型セミナー、2024年度3回目のテーマは「『好きなこと』を仕事にして成功を収める」です。ホットクレンジングゲルの『MANARA(マナラ)』や、繰り返す肌悩みが“なくなる”という想いを込めた『ACNAL(アクナル)』など、さまざまな化粧品の開発と販売を行う株式会社ランクアップの代表取締役 岩崎 裕美子さんに、好きなことを仕事にして成功する実体験や考え方、コツなどをお話しいただきました。

「普通の女子大生」から100億円企業の社長へ

短大卒業後、大好きな旅行に携わる仕事をしたいと考え、大手旅行会社に就職したという岩崎さん。当時はバブルの終わりかけの時期で、このままなんとなく働いて大手企業の社員と結婚することがゴールだと漠然と考えていたのだとか。そんな岩崎さんですが、今では18期目にして120億円以上も売り上げている企業の社長。いったいどんな経緯で起業に至ったのでしょうか。

「22歳のころ、海外旅行のカウンターの営業をしていました。ある日、気付きました。高学歴で英語も話せて・・・という人だけが活躍しているわけではない。『いつか自分で会社を経営して社会に影響を与える人になりたい』と思って努力を続ければ、誰でも何にでもなれる、と。私もいつか社長になろうと思って、旅行会社を退職してベンチャーの広告代理店に転職しました」

いつか自分で起業するなら、営業ができなければと考え、転職先に広告代理店を選んだ岩崎さん。創業5年、従業員20名ほどの会社に地元・札幌で採用され、東京に転勤。仕事が取れないとクビになってしまうという過酷な環境で、毎日夜中まで働くことが当たり前だったといいます。

「いわゆるブラック企業ですよね。早い人は1週間で辞めるし、長くても2年。そんな離職率100%の環境下でコツコツ5年半がんばって、ようやく営業トップになれたんです。そのうち取締役に昇格したものの、35歳のころに管理職がほぼ全員退職する事件が起きました。そのときに、このまま働き続けるか、結婚して辞めるかの2択しかないと気づいたんです。毎日夜中まで働いてがんばって取締役になっても、子どもを産んだらクビになってしまうかもしれない。だったら、女性が一生涯活躍できる会社を自分でつくればいいと思い、当時の後輩と2人で独立して起業しました」

それがちょうど37歳のころ。15年もがむしゃらに毎日夜中まで働いていた岩崎さんは、気づけば肌がボロボロになっていたそう。その悩みを解決するために、自分が納得できるクレンジングを作ろうと奔走したそうです。

「いろんな化粧品会社やメーカーを訪ねて、肌に優しいアイテムを作りたいと説明して回りました。メーカーさんいわく、売れている他社製品と同じものを作ってほしいという会社もあるようなのですが、私は自分がこだわって納得できるものしか欲しくなかった。なので、いつか社長になると決めてから貯金をしていたぶんを切り崩して試行錯誤しました。投資してくれる人もいないだろうし、もし投資してもらったらその方の意見も聞かなきゃいけなくなる。私は自分のために自分が欲しいものを作りたかっただけなので、全部貯金でなんとかしました」

そしてできあがったのが、岩崎さんのこだわりを全部詰め込んだ『ホットクレンジングゲル』。2024年7月末時点で、累計販売本数2,500万本という大ヒット商品です。(リニューアル前製品含む)

「私たちの企業理念は『たった一人の悩みを解決することで、世界中の人たちの幸せに貢献する』です。ホットクレンジングゲルは、私というたった一人の悩みを解決するために作ったアイテム。それがいまや、年間約70億円(2024年9月期)売れていて、台湾にも会社がある。これからも、たった一人の悩みを解決する製品をつくりだすことで、世界中の人たちを幸せにしていけるような会社であり続けたいと思っています」

仕事が楽しいと思っている社員0人の状態から、働きがいのある会社へ大変身!

現在、株式会社ランクアップは、産休後の職場復帰率は100%。2013年には「育児・介護休暇制度充実部門」、2016年には「長時間労働削減取組部門」で東京都の「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」に指定されています。

「長時間労働をしないのにずっと売上を上げ続けていることや、従業員約100名のうち8割が女性で、さらにその半数がママという女性活躍の会社であるということから、取材も多く受けています。今となっては働きやすい会社ではありますが、実は起業して従業員を雇ってからしばらくは、とっても暗い会社だったんです。企業サーベイを取ってみたところ、『社内では貴重な事柄や変化についてきちんと伝えられていますか』という質問に『はい』と回答した人が16%だったり、『経営・管理層は言うこととやることが一致していますか』に『はい』と答えた人が6%だったりしました。『会社の人たちは仕事に行くことを楽しみにしていますか』に至っては、なんと『はい』は0%。私と副社長は明るいのに、社員は暗く、アンケートの結果も悲惨。なんとか改善しなければと思い、2泊3日の社員研修を実施したんです。そこで見えてきたのが、ワンマン経営という実態でした。ワンマン社長って、自分がワンマンだって気づけないんですよ。私と副社長が悩みに悩んで決定・発表したことも、結果を伝えるだけで経緯や理由をしっかり社員に説明していなかったために、『また社長が突然何か言い出した。私たちの意見はぜんぜん聞いてくれない。言われたとおりにしていればいいんでしょ』と思われてしまっていたんです。研修を機に、私と副社長が社員の気持ちを1ミリもわかっていなくて、悪いのは自分たちだったということに気づけた。それが、私たちの会社が大きく変わるきっかけでした」

岩崎さんは行動指針に「挑戦」を掲げ、会社の改革を推し進めたといいます。

「まずは権限委譲。社員に権限をもたせることで、今まで全部自分で決めていたことをある程度任せられるようになりました。挑戦の風土を大切にするために研修や評価制度を導入し、改革のために新卒採用も始めました。それからというもの、社員の発案でどんどん新規事業や新部署が生まれ、散々だった企業サーベイも4年後には数字が明らかに変わり、『総合的に見て働きがいのある会社と言える』と答えた社員が93%という結果に。福利厚生もとても充実していて、特に珍しいのは病児シッター制度。ママが多いですからね。子どもが急に体調を崩してしまっても安心して仕事ができるよう、1日3万円くらいかかるところ、当初は300円負担でしたが、現在は全額会社負担です」

そのほか、時短勤務制度はもちろん、有給休暇を1時間から6時間までの時間単位で取得できる制度など、働きやすい環境づくりのためのさまざまな取り組みが行われています。
ご自身の過去の経験を活かし、子どもを産んだらクビではなく、子どもを産んでも女性が生涯活躍できる会社をつくりたいという岩崎さんの想いが体現されていることがわかります。

「たった一人の悩みを解決する」信念を貫くことで勝ち抜く

講義のあとは、三竹さんとのトークショー。三竹さんからは、販路の見出し方や、貯金を切り崩して事業を行うことへの不安などの質問が。

「広告代理店で働いていたときの得意先に化粧品やサプリメントを売っている会社が多く、なかには社長一人であとはアルバイトといった会社もあったんです。なので販路については、自分がこだわった製品を作ったら、あとは通販で注文を取ればいいと思っていて。広告は、30万円とか50万円とかのフリーペーパーの小さめの枠を買って、とにかく人件費をかけないために自分たちで書いていました。もし売れなくて資金が尽きたら、またどこかに勤めようと思っていました。そこでまた貯金して始めればいいですから」

こだわりの製品を作りあげるという情熱が強く、資金が尽きたらまた貯金すればいいという前向きな岩崎さんの考え方が伝わってくるエピソードです。
続けて三竹さんから、「右肩上がりで売上が上がり続けているなか、何か危機に直面した経験はあるか」という質問がありました。

「実は、ホットクレンジングゲルが相次いで真似されてしまった時期があるんです。私たちのホットクレンジングゲルは4,180円なんですけど、他社から2,000円のものが出て、1,000円のものが出て、600円のものが出て……。巷に温かくなるクレンジングが溢れていったんです。とても不安で、ホットクレンジングゲルを守る・攻める会をつくり、社員みんなで考えてどんどん製品を進化させていきました。そのときに学んだのは、真似をしてくる会社は、ただ真似して当たればいいと思っているだけ。ブームが去ればいなくなる。いい商品を作ろうという信念を貫いているわけじゃないんです。だから、私たちは常にホットクレンジングゲルを進化させ続けて、お客さまを大切にし続けることで、勝ち抜けたんです。今では競合も本当に少なくなりました」

ただ「売れる商品を作ろう」「売上を増やそう」ということでなく、「たった一人の悩みを解決するためにこだわりの製品を作る」ことを貫いてきた岩崎さん。さまざまなことに挑戦するかたわら、軸となる信念を貫く情熱こそが、競合を抑えて勝ち抜く秘訣の一つということがわかります。

会社の方針は勇気をもって振り切ることが大切

質疑応答では、会場からだけでなくオンラインでの参加者からも質問がありました。
子どもの都合で休みが多くなってしまうママ社員と、しわ寄せがきてしまう他の女性社員の人間関係をどう計らいながらやっていけばいいのかという質問については、岩崎さん自身の経験を交えて回答をいただきました。

「お互いの立場が違うとどちらも苦しむことになるので、勇気をもってどちらかに振り切ったほうがいいです。長時間働く人に合わせるなら、ママは採用しない。ママも採用するなら、全員早く帰れる方針にする。私たちの会社で最初に出産したのは私だったんですけど、自分含めて社員全員に残業禁止令を出しました。当時は私しか子どもがいなかったので、社員には反対されましたが。でも、これから他の社員が出産したとき、残業禁止の風土がないと働きにくくて辞めてしまうじゃないですか。だから、私しか子どもがいないうちに残業禁止にしたんです。長時間労働だから売上がいいというわけではないですからね。うちは残業しなくていい、だからみんな安心して働けるし、ママになっても辞めなくていい。そういう振り切り方をしました」

そのほか、起業前に準備しておいたほうがいいことや、事業を続けていくなかでの決断についてなどの質問が挙がり、どれも岩崎さんの貴重な実体験を交えてお話していただきました。
セミナーを通し、岩崎さんが何度も繰り返していたことは、「たった一人の悩みを解決する」という理念。自分が解決したい課題を見つけ、情熱をもって事業化した岩崎さんの強い信念が伝わってくる2時間でした。

岩崎 裕美子
株式会社ランクアップ 代表取締役

1968年北海道生まれ。新卒でJTBに入社。その後、広告代理店へ転職。営業成績トップとなり営業本部長として活躍したが、ブラックな働き方を続けたことで肌がボロボロになり、10歳も老けてみられることに悩んだ経験から、自分で肌を美しくするために化粧品会社を起業。苦労の末にマナラ化粧品を開発し2006年に販売をスタート。多くの女性に支持され、今では日本だけでなく台湾、中国、シンガポールなどアジアにも進出している、「マナラホットクレンジングゲル」を筆頭に、売上は120億円を越える。「たったひとりの悩みを解決することで、世界中の人たちの幸せに貢献する」という理念のもと、悩み解決カンパニーを目指している。また長時間労働を禁止し、子育て中の社員が活躍しやすい制度を導入。独自の取り組みで楽しく、働きやすい環境を築いていることで、出産しても不安なく働けるため復職率は100%を達成。女性活躍推進企業として多く取り上げられている。

三竹 麻子
一般社団法人WE association 理事​
株式会社A&CO代表取締役社長

KDDI、マイクロソフト、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て独立、株式会社A&COを創業。
社会人大学院の女性キャリア支援からスタートし、キャリアコーチサービス「Good Coach」を運営。企業の女性管理職育成や男性管理職のマインドセットにコーチングで成果をあげてきた。
2023年業界専門紙数社と一般社団法人WE associationを設立、DE&Iに関する企業支援の幅を広げている。

東京都女性経営者会員登録はこちら

Follow us

  • Facebook