セミナー
日時 | 2022年1月20日(木)15:00〜17:00 |
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講師 | 株式会社 Zaim 代表取締役 閑歳 孝子 |
進行 | 株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長 株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長 佐々木 かをり |
女性の起業と、経営者としての成長をサポートする「TOKYO女性経営者塾 by N E W」。今回の講師は、独学で家計簿アプリ「Zaim」を開発、950 万ダウンロードを超えるサービスに成長させた株式会社Zaim代表取締役の閑歳孝子さんです。起業から現在まで、そしてデータから見えてきたコロナ禍における変化をお伺いします。
家計簿アプリというと「節約するためのツール」と思われがちですが、閑歳さんは「私たちはそう捉えていません」と語ります。
「私たちのミッションは、『自身の可能性を発見し、主体的に行動できる人を増やす』ということです。どういう人生にしたいのか、どういう行動を起こしたいのか、それをあまり狭めることなくトライして自分らしい人生を送るために、お金は重要なファクター。その使い方を間違えなければ、納得性の高い人生になるのではないかと考えています」
大学卒業後、出版社、WEB系ベンチャー企業を経て、独学でアプリ開発の技術を習得。2011年にアプリを開発し、翌年に株式会社Zaimを創業しました。以来10年以上、成長し続けることができた理由は、「課題意識というか、これが多くの人にとってすごく重要なことなんじゃないかという信念があったから」とのこと。揺るぎないミッションの下、株式会社Zaim は7期連続黒字を達成しています。
個人向けサービスとしてスタートしたZaimですが、現在は法人向けサービスも展開。ユーザーの購買データをほぼリアルタイムで取得し、商品や店舗を判定、カテゴリなどを自動分類することで、さまざまなマーケティング施策への活用を可能にしています。
ここからは、Zaimのデータによって見えてくる、コロナ禍における消費行動、社会の変化を探っていきます。「新型コロナの新規感染者数と、利用ユーザー数が比例していたのは?」と、参加者に問いかける閑歳さん。①外食、②カフェ、③フードデリバリー、という三択が示されます。答えは、③のフードデリバリー。2019年から2021年12月までのフードデリバリー支出総額と、新型コロナ感染者数を重ねたグラフが示されました。
「国の家計調査のデータなどは、どうしてもタイムラグがありますが、我々のデータは速報値なので、このような変化もすぐわかるようになっているんです」
さらに、「食のDX指数」(食に関する支出における、ECサイトやネットスーパー等の利用率)、動画配信サービスなどの「家ナカ消費」、洋服やコスメ、飲み会などの「おでかけ消費」の変化が豊富なデータとともに示され、コロナ禍の消費行動が浮き彫りになりました。
2021年の国の施策だった子育て世帯への臨時特別給付金については、もっとも多い用途が貯金・投資だったことも明らかに。「政府としては、本来は目の前の支出に使って欲しいという意図だったと思います。また、アンケートで募った感想については、給付対象者は『良いと思う』、非対象者は『良いと思わない』が最も多く、分断が生じたことがわかります」と、施策の成果における現実を語りました。
コロナ禍の消費行動から社会変化を読み取る前半の講義が終了し、後半は佐々木かをりさんが進行を務めるトークショーです。
「最初はお一人でZaimを開発されたんですね。資金集めはされたんですか?」と、佐々木さん。「その時は会社員で、自分のお小遣いをサーバやシステムに費やしていました。言ってみれば、ゼロ円での起業です」と、閑歳さんが答えます。その1年後に数十万人のユーザーがつき、300万円の資本で法人化した後、クックパッドからの出資を受けた経緯を詳しく語ってくださいました。
佐々木さんが「私は1988年から、パソコン通信を使って日本で最初の異業種間女性ネットワークを作ったんです。その時のニフティサーブもそうですが、後から別のプロバイダーが出てくるなど、コンペティターが準備万端で現れますよね。途中でお客さまを失うことなく成長できたのは、どこに秘訣があるのでしょうか?」と、話題を掘り下げていきます。
「ユーザーさんときちんと向き合ってきたというのはあると思いますね。長く使う方に聞くと、『なんか居心地がいい』と言われます。アプリやサービスから出される雰囲気、メッセージが届いているのかなと思います」
続いて、参加者からの質問を募ります。「リスクの取り方」については、閑歳さん自身はとても慎重とのこと。起業した頃は投資ブームで多くのVCから声を掛けられたものの、しばらくは踏みとどまり、1年後にユーザーが増えてから出資を受けています。
「実績をつくってからだったので、自身の決定権がある状態で出資を受け、対等な関係になれました。それが大きな転換期で、リスクヘッジできたのかなと思います」
最後に、閑歳さんから参加者にエールが送られます。
「私自身は起業したいということが先にあったわけではないのですが、振り返ってみると本当に面白い。自分自身の勉強になりますし、誰かのためになっているというのは、ありがたいお話だと思います。皆さんそういう気持ちで事業やサービスをされていると思うので、支え合いながら、東京で、全国で、そして世界にはばたいていけたらと思っています」
佐々木さんが温かい言葉で締めくくります。
「女性が起業するのは簡単になりました。でも、ベーシックなことを知らないまま、社会的ミッションだけを考えてスタートしてしまって、融資と投資の違い、株の自分の割合などでもがいている方もいます。みんなで勉強し合っていきましょう」
この後はネットワーキングで、女性経営者同士のつながりと学び合いを深めるひとときとなりました。
1979 年生まれ、慶應義塾大学環境情報学部卒業。日経BP社にて専門誌の記者・編集に携わった後、Web系ベンチャー 2社にて自社パッケージの企画・開発を手がける。
独学でサービスやアプリ開発の技術を学び、2011年に家計簿アプリ「Zaim」を個人サービスとして公開。
2012年に法人化し、クチコミにより 950 万ダウンロードを超えるサービスに成長させる。
App Store・Google Play・Windowsストアアプリの部門別国内一位の三冠、2013年度グッドデザイン・ベスト100など数々の賞を受賞。
ダイバーシティの第一人者。1996年から日本最大級のダイバーシティ会議「国際女性ビジネス会議」を企画・プロデュース、2000年から「イー・ウーマン」サイトを中心にダイバーシティ関連のコンサルティングおよび研修・講演。組織の多様性と成長性を分析する「ダイバーシティインデックス」を開発。また、内閣府男女共同参画会議、厚生労働省をはじめ多くの政府審議会等の委員を務める。世界銀行「女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)」日本代表。日本代表としてAPEC、OECD等国内外での講演も通算1,600回以上。これまで東京大学、上智大学など複数の大学、高校等で教鞭を執る。また、「アクションプランナー」と佐々木メソッドによる時間管理術は日本の時間管理・手帳ブームをつくり毎月の講座も「人生が楽しくなる」と人気。テレビ朝日「ニュースステーション」レポーター、TBS「CBSドキュメント」アンカーなど歴任。現在もテレビ、雑誌、新聞等のコメンテーターを務める。2009年ベストマザー賞受賞。2021年「ブルガリ アウローラ アワード2020」受賞。神奈川県横浜市生まれ。上智大学外国語学部比較文化学科卒業。米国ニューヨーク州エルマイラ大学に留学。2008年名誉文学博士号授与。2児の母。